2025年度の大河ドラマ「べらぼう」がなかなか好評ですね。
スタート時は演出について物議を醸しましたが、放送を重ねるごとに人気を増しているようです。
このドラマの時代背景は江戸時代中期で、町人も文化を楽しむようになっているので、戦国時代を舞台とする時代背景の多い大河ドラマに少し飽きている層にも届きやすいのかも知れませんね。
さて、「べらぼう」の主人公は蔦屋重三郎という人物です。
吉原がドラマの舞台ですから、遊郭や花魁もドラマの主の登場人物になっています。
「べらぼう」の中では主人公の蔦屋重三郎の幼馴染として登場するのが松葉屋の花魁、花の井です。
花の井は老舗高級妓楼「松葉屋」でもトップクラスの花魁です。
ドラマの中では幼馴染の蔦屋重三郎を助けるために、松葉屋の名跡である「瀬川」を襲名することになりました。
この「瀬川」は記録では九代目まで続いていたそうですが、ドラマの中の花の井が襲名したのは五代目です。
「べらぼう」の中で瀬川という名跡が不吉なものとして描かれていますが、いったいどういうことなのでしょう。
古典落語「松葉屋瀬川」
名跡として九代まで続いた瀬川は、初代が落語の演目になるほど有名なのです。
名妓と呼ばれるのは二代目、四代目、五代目なのですが、初代のエピソードが話題になって広まったことから名跡になったと考えられます。
吉原の花魁は、借金のかたに売られているので、自由の身になるには借金を完済する年季明けまで客を取り続けるか、身請けされるしかありませんでした。
妓楼のトップの花魁ともなれば、身請けの費用も莫大になります。
盛大に祝われて吉原を出ていく様子は、そこで働かなければならない遊女たちにとってあこがれの存在になるのでしょう。
初代瀬川もとても裕福な商家に身請けされましたが、妾ではなく若旦那の妻として身請けされたのですから、松葉屋にとっては縁起の良い名跡となったわけです。
あらすじ
大家の商人の跡取り息子として育った善次郎は、とても堅物で本ばかり読んでいる。
父親はあまりの堅物ぶりを心配し、少しは遊びを覚えた方が良いだろうと番頭に吉原へ連れて行かせようとする。
簡単にはその気にならなかった善次郎だったが、幇間(太鼓持ち)の手を借りて何とか遊郭へ連れていくことに成功する。
そこで善次郎が見たのが瀬川だった。
たちまち瀬川にぞっこんになった善次郎は、そのまま数か月も松葉屋に居続け、大金を使ってしまう。
ついには勘当されてしまい、松葉屋を出ていかなければならなくなる。
身投げを試みたところを偶然、実家の店で働いていた忠蔵に助けられ、そこに身を寄せることになる。
なぜこんなことになったのかと、ことの顛末を聞くと、瀬川に手紙を渡してくれると言う。
善次郎が姿を見せなくなり、悲しみのあまり寝込んでいた瀬川は、手紙を読んでうれし泣きし、雨の夜に抜け出して会いに行くという返事を託した。
そして待ちに待った雨の夜、いつの間にか雪に変わり、そこに現れた瀬川。
善次郎と手を取り合って喜ぶ様子を見ていた忠蔵は、勘当を解いてくれるように頼みに行くと、二人の様子を切々と伝えた。
息子がそこまで惚れ込み、花魁も本気だとわかると、身請けさせることを決心し、二人は晴れて夫婦になったのです。
四代目瀬川
初代の身請け話は江戸でも話題になり、二代目、三代目と、瀬川は松葉屋の看板花魁が襲名する名跡となります。
四代目の瀬川は教養もあり、容姿だけではない名妓との誉高かったと言われています。
身請けの話も色々あったはずで、その中でも松葉屋の主人が決めた相手であればなかなか断れなかったのではないかと考えられます。
断る権利は花魁にもあるのですが、現実は甘くなかったのでしょう。
看板になる花魁の労働は過酷だったと想像できます。
しかし、身請けを断れなかっただけじゃなく、四代目瀬川には心に決めた人がいたのではないかと言われています。
看板である花魁の身請けとなれば今の金額では数千万から億単位の大金が必要だと言われているのですから、よほどの大金持ちか高貴な身分でないと不可能でしょう。
四代目瀬川は、身請けの話を受けたあとに自ら命を絶ったので、不吉な名跡となってしまったわけです。
これは「べらぼう」の中でも描かれているので、実在の四代目瀬川の死因は悲しいものだったのでしょうね。
五代目瀬川の末路
花の井が瀬川を襲名するまで、四代目から10数年経っていたそうです。
いきさつが語り継がれている狭い世界なので、花の井の瀬川襲名はたちまち大ニュースとなったのは容易く想像できますね。
しかもドラマの中でも描かれているように、鳥山検校という悪名高い人物に身請けされるのです。
今の価値で一億円を超えるほどの大金を積んで身請けしたのですから、鳥山検校の惚れ込みぶりがうかがえます。
しかし、記録に残っているのは五代目瀬川の第二の人生はけっしてハッピーエンドではなかったということ。
鳥山検校は幕府から財産を没収され、江戸から追放されてしまうのです。
五代目瀬川を身請けしてわずか三年後くらいの出来事で、その後の瀬川の記録は残っていないそうです。
ドラマでは、その後の瀬川が描かれるかも知れませんが、今のところはなんとも悲しい末路になりそうで心が痛いです。
とはいえ、花の井改め瀬川は、視聴者の中でもかなり人気を集めています。
このまま登場させないとは考えにくいので、楽しみにしたいと思います。


