怪談話の「皿屋敷」は有名ですよね。
「番町皿屋敷」とか「播州皿屋敷」など、日本各地に同じような怪談話がありますが、もとになっているのは同じだと言われています。
皿を数える幽霊の話として知られています。
ただ、「皿屋敷」という落語もあります。
落語なのに怪談話?
怖い話では笑えないよ
と思われるかも知れませんね。
怪談の「皿屋敷」と落語の「皿屋敷」について、詳しく見ていきましょう。
怪談話の「皿屋敷」とは
怪談話の「皿屋敷」は、日本全国に似たような話があります。
細かい違いはありますが、大きくあらすじに違いはありません。
どんな怪談話なのか、あらすじを確認しておきましょう。
あらすじ
あるお屋敷で女中として働いているお菊という女性がいました。
お菊さんは、ある日、その家の主人がとても大切にしている10枚組の皿のうち1枚を不注意で割ってしまいました。
激怒した主人は、お菊さんの指を1本切り落とします。
それでも怒りがおさまらずに、お菊さんを手打ちにするつもりで部屋の閉じ込めました。
殺されるのを察知したお菊さんは、自ら部屋を抜け出して屋敷の敷地内にある井戸に身を投げて命を落とします。
それ以降、夜中の丑三つ時になると井戸から「一枚、二枚、三枚~」と皿の数を数える声が屋敷に響くようになります。
お菊の幽霊が皿の枚数を数えているのです。
皿の数を数えて9枚で止まると、悲しそういすすり泣く声が響くのですから、屋敷の人たちは恐怖で眠れなくなります。
結末について
怪談「皿屋敷」の結末は、複数のパターンがあると言われています。
お話としてよくまとまっているのは、お菊の幽霊に困った屋敷の人たちが、お菊が1枚割ってしまった9枚の皿に1枚足して、10枚の皿になったと思わせる方法です。
お菊が毎夜皿を数えて、9枚で止まるとすすり泣くのですが、10枚揃っていることで安心して成仏するという結末です。
しかし、そもそも「皿屋敷」のお話は、お菊がお皿を割ったわけではなく、無実の罪を着せられて処罰されたというのが原形とも言われています。
そうなると、皿の数が戻ったとしてもお菊の恨みは晴れないので、結末もいくつものパターンが存在するのです。
落語の「皿屋敷」とは
落語の「皿屋敷」は、怪談ではなく笑いどころが満載の滑稽話です。
あらすじをご紹介します。
あらすじ
怪談で有名なお菊の幽霊が出るという噂の皿屋敷に、面白半分で肝試しに出かけた3人の若者。
お菊の幽霊が皿の枚数を数え始めて、9枚数え終わるまで見てしまうと、呪われるという話を聞いていたので、6枚になったらその場から逃げることにしていた。
丑三つ時になり、古井戸からお菊があらわれて噂通りに「一枚、二枚~」と皿の数を数え始めます。
3人の若者は怯えながらも、お菊がとてお美しいことに驚きます。
6枚になった時点で慌ててその場から逃げると、何事も起こらなかったので味をしめます。
「6枚で逃げれば呪われることもないから、またお菊さんのお顔を拝みに行こうぜ」と翌日もまた出かけました。
そのうちお菊の幽霊が美人だという噂が広まり、見物人が増えてきます。
屋台まで出る始末です。
お菊の方も、見物人が増えてちょっと調子に乗ってきます。
見物人に愛想をふりまいたりして、その場を湧かせたりしました。
ある夜も、大勢の見物人がいる中でお菊があらわれます。
しかし、いつもよりも、数えるのが早いのです。
あっという間に6枚になると、見物人は慌てふためきます。
「呪われるぞ」と叫びながら、われ先に逃げだそうとして大混乱になるのです。
しかしお菊はお構いなしに数え続けて、十八枚まで数えてピタッと終わりました。
見物人たちは呪われていないことを安心しながら、お菊に聞きます。
「なぜ十八枚まで数えたんだ?」と。
するとお菊は、
「毎晩毎晩見物人が集まるから、休みがなくなったんだ。だから十八枚まで数えて明日は休ませてもらいます」
この最後の結末(サゲ)は、お菊が律儀な性格であることを物語っています。
休みたいから、明日の分まで数えるなんて、幽霊になっても真面目な人だったというわけです。
まとめ
「皿屋敷」は怪談話があまりにも有名なので、落語だけじゃなく、浄瑠璃や歌舞伎の演目にもなっています。
理不尽な理由で命を落とすこともあった時代には、こういう怪談話が流行るのもわかります。
それにしても、怖くて悲しい話を滑稽な話に変えてしまうとは、落語は自由で良い芸だと改めて感じました。