「権助提灯」の旦那さんを巡る二人の女の火花に隠される気持ち!

落語の人

古典落語には、奉公人が大勢いるような大きな商家が舞台になる演目が数多くあります。

今ではあまり見られないことですが、昔は住み込みの奉公人が多かったため、主人と奉公人のやりとりなどが描かれる落語がたくさん作られたわけです。

共感されることで、人気の演目になるのでしょうね。

「権助提灯」も商家の旦那さんを主人公とした、有名な古典落語です。

じつはこの噺の主人公は、旦那さんのように見えますが、じつは旦那さんを巡る2人の女性の心情を読み取るのが面白いのです。

「権助提灯」の登場人物である2人の女性の心情を、考察してみましょう。

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「権助提灯」のあらすじ

ある商家の主人には、正妻のほかに自宅から少し離れた場所に妾を囲っていました。

商売が上手くいき、裕福な生活を送れるような立場になると、商人でも妾を囲うことは珍しくありませんでした。

しかし、そうは言っても正妻の手前、遠慮しながら妾のところに通う男性が多かったはず。

ところが、この家の妻は妬むのが大嫌いな性格でした。

なので、妾のことも気を配るような人だったのです。

不思議なもので、妾のお初も同じような性格の女性で、妻を妬むようなことも一切ありません。

そんな性格の妻と妾なので、主人は遠慮することもないわけです。

この上ない好都合な日々を送っていました。

ところがある強い風が吹く夜のことです。

妻は夫にこう言います。

「きっと心細く思っているだろうから、お初のところへ行ってあげたらどうですか?」と。

風の強い夜は、火事が起こりやすいので、気を付けなければいけなかったからでしょう。

主人は「いや、この家のことも心配だ」と言ったのですが、妻はさらに続けます。

「この家には、奉公人が大勢いるじゃないですか。お初は一人で心細いはずですよ」というのです。

主人は「お前がそこまで言うのなら、お初のところへ行ってやることにするよ」となり、夜道を照らす提灯を持つために奉公人の権助を呼びます。

権助が提灯で足元を照らしながら、お初の家に着いたのですが、お初は旦那さんを長居させません。

「奥様の気持ちを考えれば、このまま旦那さんをお泊めするわけにはいかないので、早くお帰りください」と言われて仕方なく家に戻る主人。

ところが妻からは「このままでは、私の顔が立たないからお初のところで泊まっておあげなさい」と言われて、また夜道を歩き出そうとして権助に「提灯を灯しておくれ」と声をかけます。

すると権助がこう言いました。

「大丈夫だ旦那さん、提灯は要らねえよ。もう夜が明けたから」

妻の気持ち

「権助提灯」は、妻の心の広さがまず土台として揺るぎないからこそ面白いのです。

しかし、ほんとにこの妻は妾に対して、まったく嫉妬心を抱かなかったのか・・。

その点の考察はかなり個人差があると思います。

①夫への愛情は消えているので嫉妬しない
②正妻としてのプライドから嫉妬を見せない

たぶん、どちらかに分かれるでしょう。

この噺は江戸時代後期~明治時代が舞台だと考えられるため、妾を囲うのは男の甲斐性などという考え方が強かったのだと思います。

それでも感情は今の時代の人と同じだと思うので、平然としていられるのは、すでに夫に対しては家族愛のような感情しか残っていないのではないでしょうか。

裕福な生活を送り、奉公人が大勢いて、満足な生活を送っているのなら、旦那さんが妾のところに通っても、別に怒ることもない・・。

その気持ち、中高年の既婚女性なら理解できるのでは。

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お初の気持ち

妾のお初の気持ちとしては、奥様に対して遠慮しているのが大きいと思います。

お初が妾になる前に、どんな立場の女性だったのかは描かれていませんが、芸者や遊郭で働く花魁などが妾として囲われることが多かったそうです。

妾として第二の人生を送る人もいれば、スポンサーとして支援してもらい、商売をはじめて自立する道を選ぶ人もいる。

お初の場合は、妾としての人生を選択したわけですから、正妻である奥様のご機嫌を損ねるようなことでもあれば、立場が危うくなるかも知れません。

また、お初は安定した暮らしを手に入れるために妾になったとすれば、旦那さんへの愛情はお金に比例するというドライな考え方もできます。

もしも正妻の方が嫉妬深くて、妾に対して意地悪な仕打ちをするようであれば、また違う対応になったのかも知れませんが、お初もプライドの高い女性ではないでしょうか。

まとめ

「権助提灯」というタイトルなので、権助が重要な登場人物なのかと思いますが、権助は旦那さん、正妻、妾の関係を、トライアングルの外から客観視する役割です。

田舎の訛りが抜けきらない野暮な印象ですが、じつは権助が一番よく理解できていたのかも知れません。

2人の女性に挟まれて有頂天になっていた旦那さんですが、じつは両方が押し付け合っているように見えます。

旦那さんを取り合うような嫉妬心は、双方とも持っていないと考えてしまいます。

あなたはどう思うでしょう。

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