「ブレーメンの音楽隊」は有名なグリム童話として、世界中で愛されてきました。
沢山の動物が出てくる童話なので、子供たちにも人気があります。
動物が出てくる童話の中でも
好きなお話だよ
ぼくも好きだな
楽しい気分になるから
子供のころに読んだきりの大人は、子供のころの記憶のままかも知れませんね。
ただ、この「ブレーメンの音楽隊」という題名のわりには、ブレーメンが舞台でもなければ、音楽隊も出てこないのです。
え!ほんとに?
記憶をよみがえらせて、この物語について考えてみましょう。
「ブレーメンの音楽隊」のあらすじ
年老いたロバは、飼われていた家から逃げ出しました。
逃げ出した理由は、飼い主からいじめられていたからです。
ロバはこれまで、飼い主のために一生懸命に働いてきました。
しかし年老いてしまい、若い頃のように働けなくなったのです。
すると飼い主はムチでひどく打ち、ロバを痛めつけました。
このままではもっとひどい目に遭うのはイヤだ!
それで逃げ出したのです。
ロバは悲しい気持ちを振り払うように「そうだ!ブレーメンに行って音楽隊に入ろう」と思いつき、旅に出たのです。
ロバがブレーメンを目指して歩いていると、悲しそうに泣いている犬に出会いました。
ロバは犬に「どうしたんだい?」とたずねると、犬はこう答えました。
「年老いて猟ができなくなった役立たずだから、殺してしまえ」と飼い主が言っているのを聞いて脱げ出してきたんだ。
ロバは自分と同じような境遇の犬に一緒にブレーメンへ行こうと言い、犬も喜んでロバとともに歩き出しました。
しばらく歩くと、びしょ濡れになり、悲しそうに泣いている猫に出会います。
猫は言いました。
「年を取ってねずみを追うことができなくなったから、飼い主に川へ投げ捨てられて殺されそうになった」と。
気の毒に思ったロバと犬は猫も一緒にブレーメンへ行こうと誘います。
ロバ、犬、猫が歩き出すと、悲しそうに泣くニワトリに出会いました。
わけを聞くと「年老いて朝起きられなくなってしまい、目覚ましの役に立たないからスープにして食べられそうになったんだ」と悲しそうに言いました。
ロバたちはニワトリも一緒にブレーメンに行こうと誘いました。
しばらく歩いていると、森の中に灯りのついた家を見つけました。
ロバたちはその家の中をのぞいてみると、なんと泥棒たちの隠れ家だったのです。
泥棒たちは贅沢なごちそうを並べていました。
ロバたちは話し合いました。
何も食べずに歩いてきて腹ペコだったので、ごちそうにありつきたいと考えたのです。
そこで、ロバの上に犬、犬の上に猫、猫の上にニワトリが乗り、窓の外に立つと、同時に鳴き声を上げました。
4種類の動物の大きな鳴き声とともに、窓に映った化け物のような影に泥棒たちは驚いて逃げ出しました。
ごちそうを食べてお腹いっぱいになったロバたちは、そのまま眠ってしまいました。
泥棒たちの中の下っ端の子分が、親分に命じられて家の中の様子を見に戻ると、暗闇の中で何かがキラッと光ります。
その瞬間、泥棒に猫がとびかかり、犬はかみつき、ロバは後ろ足で蹴り、ニワトリはクチバシで突いたのです。
暗闇で姿が見えないので、泥棒の子分は悲鳴を上げて逃げ出し「あの家には魔物がいます」と親分に報告したのです。
泥棒たちは隠れ家に戻るのを諦めて、他の場所へ去っていきました。
ロバたちはその家をすっかり気に入ったので、のんびりと楽しくそこで暮らしました。
ブレーメンの音楽隊の教訓
「ブレーメンの音楽隊」のあらすじを読むとわかりますが、このお話ではブレーメンには結局は行っていません。
そして音楽隊にも入っていないし、音楽隊を結成したわけでもありません。
題名とは関係のない内容が展開するお話です。
いったい何を伝えようとしているのか、教訓について考えてみましょう。
諦めない気持ち
このお話に登場する動物たちは、みな人間にひどい目にあわされて逃げ出してきました。
運命だと諦めてしまえば、命を奪われる結果になったでしょう。
しかし、いくら年老いていても、まだ諦めていないからこそ、逃げ出して仲間と出会うことができました。
年齢を理由に諦めてしまえば、それで終わりということでしょう。
協力することの大切さ
この物語に登場するのは、年老いたロバ、犬、猫、にわとりです。
しかし、4頭と1羽が協力することで泥棒たちを追い出すことに成功します。
弱者であっても、力を合わせれば大きなこともやり遂げられるという教えですね。
柔軟な考え方
じつはこの物語の教訓の中でも、社会生活に一番役に立つのがこれです。
何事も臨機応変に、柔軟に考えることが大切だということ。
ブレずに頑固に、芯をしっかり持っていることも大切ですが、あまり頑なに考えすぎると壁にぶち当たって砕けてしまいます。
この物語に最初に登場する年老いたロバは、ブレーメンに行って音楽隊に入るつもりで長年尽くした飼い主のところから逃げ出しました。
ところが、旅の途中で同じような境遇の動物たちに出会うと、目的が変わります。
泥棒たちを追い出したあとに、その家が気に入ると、みんなで楽しくそこで暮らすのも悪くないな・・と考えを柔軟に変えるのです。
目標どおりにブレーメンに向かったとしたら、どんな結末が待っていたのかはわかりません。
しかし、楽しく生きられる場所を自分たちの力で見つけたこともハッピーエンドとして成立しているのです。
人生も臨機応変に考えられるといいですね。
まとめ
「ブレーメンの音楽隊」は、動物たちが泥棒を撃退するという痛快な内容なので、子供のころは純粋に面白くて好きでした。
大人になってからもう一度読み返してみると、意外と深いお話だったのだなと気が付いてまた楽しめますよ。