「みにくいアヒルの子」は、アンデルセン童話のなかでも人気があり、世界中の子供たちに読まれています。
子供の頃に「みにくいアヒルの子」を読んだときに、どんなことを感じたのかおぼえている人はどれほどいるかわかりません。
少なくとも私自身は、何とも後味の悪い気持ちになったことをおぼえています。
そのときに感じた気持ち悪さというか、違和感のようなものは、当時は言葉にすることはできませんでした。
しかし大人になって改めてこのお話の内容を考えてみると、違和感の正体に気が付くことができました。
もしも「みにくいアヒルの子」に違和感をおぼえた記憶のある方は、このお話が伝えようとしていることを一緒に考えてみましょう。
「みにくいアヒルの子」のあらすじ
アヒルの巣にはいくつもの卵がありました。
母親のアヒルが見守るなかで、卵から次々にヒナが生まれてきました。
ところが、そのなかに1羽は他のヒナと様子が違うのです。
頭も体も大きく、黒ずんだ色をしています。
母親のアヒルは不思議に思いましたが、水に入ると他のヒナと同じように上手に泳ぎました。
仲良く一緒に育って欲しいと願っていましたが、他のヒナたちは見た目の違う1羽をいじめて仲間外れにします。
「お前たち、仲良くしなければいけないよ」と母親のアヒルは言うのですが、ヒナたちは一緒に遊ぼうとしません。
いつも1羽だけでさみしく過ごすヒナは「ぼくがみにくいからみんなに嫌われるんだ」と悲しそうにしていました。
そんな時、母親や他のヒナとはぐれてしまいます。
心細く震えていると、森で暮らすおばあさんが家に連れていってくれました。
おばあさんはとてもやさしかったのですが、その家にいるニワトリや猫たちにもいじめられてしまいます。
仕方なくまたおばあさんの家を離れて水辺で孤独に過ごしていると、美しい白鳥たちの群れに出会います。
白鳥の姿を見て「ぼくがあんなに美しい姿をしていたら、いじめられることもなかったのに」とまた悲しくなり、生きるのが嫌になってしまいました。
どうしてぼくはみにくい姿で生まれてしまったのだろうと、水面に映った自分の姿を見ると、そこには白鳥になった自分がいたのです。
驚きながらも白鳥のたちの群れに近づいていくと、みんなあたたかく迎えてくれました。
みにくいアヒルの子は本当は白鳥だったのに、何かの間違いでアヒルの巣の中に卵が紛れ込んでしまったのでしょう。
成長して白鳥になったみにくいアヒルの子は、仲間と一緒に楽しく生きることができました。
「みにくいアヒルの子」が伝えること
「みにくいアヒルの子」の作者であるアンデルセンは、貧しい境遇で苦労しながら生きてきた人だと言われています。
人生を投げ出したくなるほどつらいこともあったのだと思います。
アンデルセン童話は、悲しい結末が多いのも、そういう境遇で生きてきた背景があったからではないでしょうか。
子供のころにはそんなことは知らなかったのですが、大人になってからアンデルセンという人物の生い立ちを知ると、なるほど‥と思うこともあるわけです。
「みにくいアヒルの子」から伝わることには、3つのポイントがあると思いました。
見た目で判断する
このお話は、外見の違いでいじめられることがまず問題になります。
しかし、アヒルの母親だけは他のヒナと見た目が違ったとしても、自分の子供として一緒に育てようとします。
ところが、母親のアヒルが「仲良くしなければいけない」と言っても、見た目で判断するヒナたちに仲間外れにされます。
ヒナたちは、自分たちとは違う様子から素直に反応してしまうのです。
人間の子供にも同じようなところはありますよね。
悪気はなくても、子どもは自分の感じたことを素直に言葉にします。
それは時として残酷で傷つける言葉になることもあるのです。
見た目で判断することはいけないことだとわかるようになるまでは、本能として反応してしまうのでしょう。
外見コンプレックス
このお話の主人公は、自分の外見がみにくいからいじめられたり、仲間外れにされると思い込んでしまいます。
それはアヒルという種と違うだけであり、決してみにくいわけではないのに、他の仲間の姿と違うから「ぼくはみにくい」と思い込むのです。
思うようにならないこと、悲しいこと、ツラい事の原因は全て外見がみにくいからだと思うのは、外見コンプレックスの思考です。
たまたまアヒルの中で生まれたため、他と違うからダメだと考えてしまうのでは、個性を否定することになってしまいます。
他のアヒルと違うことを前向きに考えられたのなら、そんなにツラくなかったのに・・。
成長を考える
アヒルの母親は、1羽だけ違うヒナを見ても、上手に泳ぐのでまさか他の種の鳥だと思わずに育てます。
きっと成長すれば、他のアヒルと同じようになると思ったのではないでしょうか。
しかし当のヒナは、自分が成長してもみにくいまま変わらないと思っています。
結果は、まるで灰をかぶったような黒ずんだ色のヒナが、美しい白鳥に成長しました。
ここから読み取るのは、子供は成長するもので、今の姿だけで満足したり、落ち込むものではないということです。
まとめ
「みにくいアヒルの子」のお話は、じつは母アヒルがカギです。
母アヒルが白鳥のヒナだと思わずに育てようと思ったからこそ、ヒナは独り立ちできるほど成長できたのです。
もしも他のヒナと様子が違うから見捨ててしまえば、卵からかえったばかりのヒナが生き延びることはできなかったでしょう。
いじめられて、仲間外れにされて、かわいそうなアヒルの子のお話だと思っていたけれど、それだけじゃないのですね。