グリム童話のなかの「くつやのこびと」は、こびとが妖精として登場します。
とても微笑ましくて、心があたたかくなるような童話なのですが、このお話の結末は少し不思議です。
こびとの妖精がなぜくつやに現れたのか・・
そして、最後の結末はなぜそうなったのか・・
いろいろ不思議に思うことがあるので、考察してみました。
「くつやのこびと」あらすじ
ある町でくつやを営む老夫婦がいました。
くつ職人のおじいさんは、若いころから真面目にコツコツとくつを作り続けてきたのです。
しかし年を重ねると目も悪くなり、力も弱くなってきたので、若いころのように1日何足も作ることはできなくなっていました。
薄暗い曇りや雨の日になると、作業は進まなくなります。
それに、おじいさんの作るくつは、とても丁寧に作られているのですが、流行りのデザインではないのでなかなか売れなくなっていたのです。
くつが売れなければ、材料になる革を買うことができません。
とうとう最後の革を使ってくつを作るときがきました。
おじいさんは「これが最後のくつ作りになるかも知れないな」と寂しそうに言いながら、丁寧にくつを作り始めました。
最後の工程に差し掛かる前に、暗くなってきたので目が見えにくくなり、作業を途中でやめて明日に持ち越すことになりました。
翌朝、くつ作りの続きをしようと作業部屋に入ってみると、そこには見事に仕上がった靴が置いてあったのです。
その靴は、途中までおじいさんが作ったとはいえ、見事なで出出来栄えでした。
ただ美しいだけじゃなく、流行りも取り入れていたのです。
それを店に出すと、すぐに立派な紳士が来て良い値段で買っていったのです。
そのお金で今度は2足分の革を買いました。
1足が仕上がる前に、また日が暮れてしまったのでおじいさんは作業をやめてまた明日に持ち越すと、翌朝には前回同様に見事なくつが今度は2足そろえて置いてあったのです。
おじいさんは驚きました。
今度は紳士靴だけじゃなく、婦人靴も作ってあったのです。
しかも素敵なデザインだったので、瞬く間に2足とも良い値段で売れていきました。
おじいさんはまたそのお金で4足分の革を買うと、子供靴、婦人靴、仕事用の靴と歩きやすい靴が4足とも出来上がっていました。
さすがに老夫婦は誰が作ってくれているのか知りたくなり、夜中にこっそりと作業場に見にきたのです。
そこには、「ぼくらはくつの妖精だ。真面目なおじいさんのために良い靴を作るぞ。さあ仕事だ仕事だ」と歌いながらくつを一生懸命作っていた2人の小人がいたのです。
おじいさんとおばあさんは、小人に何かお礼をしたくなりました。
おばあさんは小人たちが服を着ていなかったことを思い出し、2人に服を作ってあげることにしました。
そしておじいさんは、小人たちのために小さな靴を作ってあげました。
夜になると、また作業場に現れた2人の小人は、自分たちのために作ってくれた洋服と靴を見つけて大喜びしました。
洋服を着て、靴を履いて、2人は歌い踊りながら消えていきました。
それ以来、2人の小人があらわれることはなくなりました。
しかしおじいさんの靴はまた売れるようになったので、老夫婦は幸せに暮らしていきました。
「くつやのこびと」の不思議なところ
「くつやのこびと」の物語は、真面目に働いてきたくつ職人のおじいさん夫婦のもとに、くつの妖精として小人がやってきて、おじいさん夫婦を助けるという心あたたまるお話です。
また、服も靴も身につけていない2人の小人に、洋服と靴を作ってあげる老夫婦のやさしさにもほっこりします。
しかし、なぜくつの妖精はおじいさんを助けにきたのでしょう。
真面目に働き続けてきたおじいさんなのに、年老いてなかなか仕事が進まくなったから助けにきたのでしょうか。
それとも、流行りの靴が作れなくなって売れなくなったから助けにきたのでしょうか。
くつの妖精という小人は、困っている靴職人を助けるために現れるのか・・。
そのあたりの説明がまったくないのです。
もうひとつの不思議なところ
くつの妖精という小人がおじいさんの靴屋に現れた理由もわからなくて不思議なのですが、結末も不思議です。
なぜ小人たちが洋服と靴を身につけて消えたあと、おじいさんの靴屋はまた繁盛するようになったのでしょうか。
小人たちが作った靴ではないのに、また売れるようになった理由もまったく書かれていないのです。
不思議ですね・・。
考察
「くつやのこびと」の物語の不思議なポイントを考えてみると、日本で語り継がれる座敷わらしに重なるところがあるように感じました。
小人たちが現れなくなってからも、おじいさんの靴は売れるようになったというのが、妖精によるパワーのような気がするからです。
座敷わらしがいる家は繁栄すると言われます。
くつの妖精である小人たち作った数足の靴を買った人が「○○で買った靴をはいたら良いことがあった」というような評判を広げたことで、小人が現れなくなっても靴が売れるようになったのではないかと考えました。
そうじゃなければ、作る人は同じなのに、急に売れるようになるなんて考えにくいでしょう。
何度か小人たちが作った靴を売ったことで、一時的に評判が良くなったとしても、それがずっと続くわけではありません。
もともとおじいさんは腕の良い靴職人だったので、流行りのデザインじゃなくても良さのわかる人にはわかると思いますから、一時的な評判によって多くの人に知れることになれば、良い靴を売る店としてお客が増えたという考え方もあります。
くつの妖精は、腕の良い靴職人を助けるために現れたのかも知れませんが、そのあたりもよくわからないままです。
ちょっと不思議な結末なので、「めでたしめでたし」とスッキリと読み終えられない人もいるのではないでしょうか。
まとめ
「くつやのこびと」はグリム童話ですが、子供の読み聞かせる立場の大人に人気があります。
それはもしかしたら、説明できないような不思議なところを残すことで、考えさせるからなのかも知れません。
もしそうだとすれば、その策略にまんまと引っかかっていますね・・。